日本の家庭では、スマートフォンやテレビだけでなく、エアコン、ロボット掃除機、スマートスピーカー、ネットワークカメラ、スマートロックなど、インターネットに接続する機器が身近な存在になっています。
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が2026年8月に公表したスマートホーム普及啓発統合レポートでも、日本ではスマートホーム機器の利用が今後さらに広がる可能性がある一方、初期設定の負担やセキュリティ、プライバシーへの不安が普及上の課題として挙げられています。
こうした機器は暮らしを便利にしてくれますが、利用状況や音声、映像、位置情報、生活習慣などのデータを収集する場合があります。情報の種類や保存期間、第三者への提供の有無は製品やサービスによって異なるため、利用者自身が設定やプライバシーポリシーを確認することが大切です。
家の中にも「デジタルフットプリント」がある
デジタルフットプリントとは、デジタル機器やオンラインサービスを利用することで残る情報の痕跡を指します。
自宅の中でも、スマート家電の操作履歴、動画配信サービスの視聴履歴、音声アシスタントに送った指示、ネットワークカメラの映像、アプリに登録した個人情報など、さまざまなデータが生成されます。これらの情報の一部は機器本体だけでなく、メーカーやサービス提供者のクラウド上に保存されることもあります。
データが収集されること自体が直ちに危険というわけではありません。しかし、アカウントの乗っ取り、機器の脆弱性、不適切な共有設定などが重なると、第三者に情報を閲覧されたり、機器を不正に操作されたりする可能性があります。どの機器がどのような情報を扱っているのかを把握することが、リスクを減らす第一歩です。
機器による追跡とデータ収集を抑える
まず、スマートフォンやスマート家電で使用しているアプリの権限を確認しましょう。位置情報、マイク、カメラ、連絡先、Bluetoothなどへのアクセスが、本当にそのアプリの機能に必要なのか、一つずつ見直します。
例えば、使用中だけ位置情報が必要なアプリに対して、常時アクセスを許可する必要はないかもしれません。広告目的のトラッキングや利用状況データの共有を停止できる場合は、アプリ内のプライバシー設定も確認しましょう。iPhoneやAndroidでは、OSの設定画面からアプリごとの権限を管理できます。
音声アシスタントやネットワークカメラなど、特に私生活に関わる情報を扱う機器については、保存されている履歴を定期的に確認し、不要なデータを削除することも有効です。家族で共有している機器なら、どのような情報が記録されるのかを家族全員で把握しておく必要があります。
家庭のネットワークを安全に保つ
家庭内の多くの機器は、Wi-Fiルーターを経由してインターネットに接続します。そのため、ルーターの管理画面に使う初期パスワードを推測されにくいものへ変更し、メーカーが提供する機器本体のソフトウェアの更新を適用することが重要です。自動更新機能がある場合は、有効にしておくと更新を忘れにくくなります。
政府広報オンラインの家庭用ルーターやIoT機器のセキュリティ対策では、初期パスワードの変更、機器本体のソフトウェアの更新、使っていない機能の無効化、不要なIoT機器をインターネットから切断することなどが推奨されています。同ページによると、2024年に国内で観測されたサイバー攻撃関連通信は6,862億件で、その約3割がウェブカメラやルーターなどのIoT機器を狙ったものでした。
ルーターが対応している場合は、スマート家電や来客用の機器をゲストネットワークに接続し、仕事用パソコンや個人情報を保存している端末とは別のネットワークを分ける方法もあります。ただし、ゲストネットワークの仕様は製品によって異なるため、メーカーの説明書を確認してください。
また、家庭内で利用するオンラインサービスのアカウント管理も見直しておきたいポイントです。特に個人事業主や在宅勤務をしている人の場合は、プライベートで使うアカウントと仕事用アカウントを分けることで、情報管理がしやすくなります。
例えば、仕事用のメールにはカスタムメールドメインを利用し、個人利用のメールアドレスと区別することで、業務上のやり取りや顧客情報を整理しやすくなります。また、サービスごとに異なるアカウントを使い分けることで、不要な情報共有や管理の煩雑さを軽減できる場合があります。
ただし、メール環境を整えるだけですべてのリスクを防げるわけではありません。強固なパスワードの設定や二要素認証の有効化、定期的なアカウントの見直しなど、他のセキュリティ対策と組み合わせて取り組むことが大切です。
使わなくなったスマート家電やサービスを整理する
使わなくなったスマート家電やサービスをそのまま放置せず、登録したアカウントや保存データを整理しましょう。アプリを端末から削除するだけでは、サービス側のアカウントやクラウド上のデータが残ることがあります。不要になったサービスについては、アカウントの削除方法やデータの消去手続きを確認してください。
機器を譲渡、売却、廃棄する場合は、メーカーの手順に従って初期化し、アカウントとの連携も解除します。スマートフォンやパソコンだけでなく、ネットワークカメラ、スマートスピーカー、テレビ、ゲーム機などにも個人情報やログイン情報が残っている可能性があります。
新しいアプリに権限を与えたり、写真やファイルを共有したりするときには、その情報が本当に必要か、誰が閲覧できるのか、後から削除できるのかを一度確認する習慣をつけましょう。
デジタルフットプリントを完全になくすことは難しいものの、機器やアカウントを把握し、必要以上のデータを提供しないよう意識するだけでも、プライバシーとセキュリティのリスクを着実に減らすことができます。













